Cookieレス時代の到来により、これまでの広告手法は大きな転換点を迎えています。
従来のようにユーザーの行動履歴をもとに精密なターゲティングを行うことが難しくなり、多くの企業が新たなアプローチを模索していることでしょう。
そんな中でもCriteoは依然として高い効果を発揮し、広告主から選ばれ続けています。
その理由は、単なるリターゲティング技術にとどまらず、未来の購買行動を見据えた独自のテクノロジーにあります。
本記事では変化の激しい広告環境において、Criteoがどのように企業の「勝ち筋」となり得るのか、その核心に迫ります。
Criteoはただのリマケではない
結論から言うと、Criteoとは「また来たいと思わせる、きめ細やかなおもてなし広告」です。
…と、ここでECサイトでスニーカーを見た後に広告で追いかけられる話をすると、「それってGoogle広告とかのダイナミックリマーケティングと同じじゃない?」と、鋭いあなたなら思われたかもしれませんね。
その通り、仕組みの基本は似ています。
ですが、Criteoの真価は、その“おもてなしの深さ”にあります。
何を「学習」し、何を「予測」するのか?
Google広告
広範な興味・関心データ
Criteo
購買に特化したデータを活用
例えるなら、Google広告が品揃え豊富な百貨店の店員さんのように「こんな商品もありますよ」と幅広く提案してくれるのに対し、Criteoは顧客一人ひとりの好みを熟知したコンシェルジュに近い存在です。
Criteoの配信ロジックは購買データに特化しているため、よりユーザーの深いニーズを予測した「次の一手」の提案が得意なのです。
この購買データへの強いこだわりが、Criteoならではの「おもてなし」を生み出すんです。
例えば、AIが「このスニーカーを気に入られたお客様なら、きっとこちらの新着パーカーもお好きに違いありません。
セットでコーディネートすると、さらに素敵ですよ」と、ユーザー自身も気づいていなかったかもしれない“次の一手”を予測して接客してくれる感じです。
単なる追客広告ではない、Criteo流の「究極のおもてなし」がそこにあります。
Criteoと他のリマケ広告との違い
では、Criteoは広告プラットフォーマーとして、どのようにユーザー一人ひとりに最適な配信を行っているのでしょうか。
まず、GoogleやYahoo!の動的リマーケティングとの違いを表で見てみましょう。
| 比較ポイント | Criteo | Google / Yahoo! |
| AIの予測精度 | 未来の購買行動を予測し、潜在的なニーズを掘り起こすのが得意 | 過去の閲覧履歴に基づき、関連性の高い商品を提示するのが得意 |
| バナーの最適化 | 商品の組み合わせからデザインまで、全てをリアルタイムで自動生成 | 基本的には決められたテンプレートに商品を当てはめて表示 |
| 広告配信ネットワーク | Yahoo!トップ含む優良サイトの枠を、リタゲ専用の特別枠として他社広告と競争せずに広告を出せる | 多数の優良サイト(Yahoo!トップを含む)と提携しているが、他の種類の広告と同じ土俵で競争入札され、リマケ配信が広範囲に分散される |
上の表からもわかるように、Criteoは他社と比べてAIの予測精度や配信ネットワークの面で大きな強みを持っています。
それでは、その強みの源泉をもう少し詳しく見ていきましょう。
違い1|AIの「予測精度」の源泉が違う!
CriteoのAIがなぜ高精度な予測を可能にするのか。
その心臓部には「ショッパーグラフ」と呼ばれる、世界最大級のオープンなコマースデータセットが存在します。
これは、Googleなどが持つデータとは思想も構造も大きく異なります。
ショッパーグラフは、以下の3種類のデータを統合・分析することで、買い物客一人ひとりの解像度を極限まで高めることを目指しているんです。
3つのデータをAIが統合・分析し、未来の購買を予測
どんな人?
(アイデンティティデータ)
何に
興味がある?
(エンゲージメントデータ)
どの商品を
提案できる?
(商品データ)
AIが統合・分析
(ショッパーグラフ)
「未来の購買予測」が実現
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- アイデンティティデータ
オンライン(Cookie、メールアドレスなど)とオフライン(実店舗での購買情報など)のデータを結びつけ、PCで商品を見ていたユーザーと、スマホでSNSを見ているユーザー、さらには実店舗の近くにいるユーザーが「同一人物」であることをクロスデバイスで正確に把握します。 - エンゲージメントデータ
どのユーザーが、どの商品・カテゴリー・ブランドに、いつ、どこで興味を示したか(クリック、閲覧など)という膨大なエンゲージメント情報をマッピングします。 - 商品データ
提携する数多くのECサイトから得られる、膨大な商品カタログデータです。
これらを統合することで、CriteoのAIは「A店で化粧水を買った人は、B店で新商品スニーカーも買う傾向がある」といったサイト横断でのインサイトを導き出し、「この商品を見た人は、最終的にこの商品を買う可能性が高い」という「未来の購買行動」を高精度で予測するという仕組みです。
違い2|バナーの「最適化レベル」が違う!
Criteoの「ダイナミッククリエイティブ最適化(DCO)」は、ユーザー一人ひとりに対して、商品の組み合わせ、レイアウト、色、CTAボタンのデザインまで、数万〜数十万通りのパターンから最もクリックされやすいデザインをリアルタイムで自動生成します。
これは、常に膨大な量のABテストをAIが自動で行っているようなものです。
無数のクリエイティブ・バリエーションを自動生成
パターンA
CTR: 1.2%
パターンB
CTR: 2.1% (WIN)
パターンC
CTR: 0.9%
パターンD
CTR: 1.5%
AIが勝者パターンをリアルタイムで配信
配信される広告 (パターンB)
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例えば、あるユーザーには青いボタンが効果的でも別のユーザーには緑のボタンの方が心に響くかもしれません。
表示する商品は2つが良いのか、それとも関連商品を加えた3つが良いのか、などなど。
そういった細部に至るまで、AIがユーザーの過去のクリック傾向などから瞬時に判断し、最適な広告バナーを作り上げます。
この徹底したパーソナライズが、高いクリック率とコンバージョン率を支えているのです。
違い3|広告の配信先の質が違う!
Criteo はYahoo! JAPANのトップページや国内の主要なニュース・メディア等にあるリターゲティングに特化した独自の特別予約枠を、多数の有力媒体と直接契約しています。
主要ネットワークに加えて、Criteo独自の優良な提携先へ配信を拡大
主要ネットワーク
+
Criteo独自のプレミアムな提携先
これにより、GoogleやYahoo!の広告ネットワークが提供する様々な種類の広告が枠を取り合うルートと異なり、購買意欲の高いユーザーに対して視認性が高い枠へ集中的に、かつ購入の可能性が高い商品の広告を個別に最適化した配信が確実にできます。
このため、Yahoo!トップを含む独自の配信先を豊富に利用できるという点で、他社の広告と比較して優位性を持っています。
事例で見るCriteoの実力!
理論だけではなかなかイメージが湧きづらいですよね。
そこで、私たちリドルセンスが実際に運用したCriteoの事例をご紹介します。
事例1|コスメECサイト様
弊社が支援させていただいているコスメを豊富に取り揃えるECサイト様では、複数の広告媒体を運用している中で、Criteoは高いパフォーマンスを維持しています。
目指すゴールは、単なるROASの改善ではなく「事業売上の継続的な最大化」です。
運用当初は、ROASが高い「全訪問ユーザー」への配信(収穫)が中心でした。
ですが経験上、このままでは売上が頭打ちになることは明白でした。
そこで未来への投資として、新たに「非購入ユーザー」へのアプローチ(種まき)を開始。
ところが、この「種まき」に予算をかけすぎた結果、全体のROASは大きく悪化してしまいました。
この失敗から学んだことは、予算配分で重要なのは「収穫」と「種まき」のバランスだということ。
予算バランスを調整
収穫
(全訪問者)
短期的な売上
種まき
(非購入ユーザー)
長期的な事業成長
試行錯誤の末に最適な予算配分を見つけ出し、未来への投資を継続した結果、Criteo全体のROASは900%〜1000%に改善し、売上は施策開始前と比較して130%以上向上したのです。
これは過去最高の水準の結果となりました。
事例2|コンタクトレンズECサイト様
広告運用には、予期せぬ不調の波が訪れることがあります。
ある年の初夏、CriteoのROAS(広告費用対効果)が700%→200%台まで急落した時がありました。
ですが、私たちはこれを「Criteoだけの問題ではない」と見抜きました。
なぜなら、Googleトレンドで市場全体の動きを分析するとコンタクトレンズ市場は、春の需要期が一段落し、夏に向けて一時的に購入が落ち着くという季節的な傾向が見受けられたからです。
そして事実、同じ広告主様で配信している他の広告媒体も、軒並み成果が大幅に悪化していました。
私たちはこの不調の原因を市場全体の自然な波だと結論付けました。
原因が市場トレンドなら、いずれ必ず回復の波が来る。
私たちはキャンペーン停止という安易な判断はせず、予算を極限まで絞ることで戦略的に待機をしました。
ROASの変動と戦略の推移
初夏:成果が急落
ROAS 200%台
市場全体の波と分析
待機
予算を抑制
CVRの回復を待つ
夏:予算投下
ROAS 700%台
狙い通りのV字回復
そして夏本番の月にユーザーの購入意欲を映し出すCVRなどの指標で捉え、即座に予算を投下。
結果、ROASは700%台へとV字回復を達成しました。
ここで重要なのが不調の原因を全体で捉える視点の重要性です。
広い視点から分析することで、打つべき手は各段に見えやすくなります。
Criteo広告の始め方と料金体系
ここまで読んで、「Criteo広告、ぜひ始めてみたい!」と思った方のために導入ステップと料金体系について解説していきたいと思います。
Criteo広告を始めるための4つの重要要素
Criteoアカウントの構造は広告の目的設定から実際の配信までを効率的に管理するため、以下の4つの階層で構成されています。
では以下で詳しく見ていきましょう。
1. アカウント
広告活動全体の司令塔として機能します。
- 支払い情報や、効果計測に必要なCriteoタグなど、インフラ周りを管理します。
- データフィード(AIの教科書)を登録・管理するのもこの層の重要な役割です。商品名、価格、在庫状況などのデータフィードの質が、AIの予測エンジンの学習精度を大きく左右するからです。
2. キャンペーン
広告活動の「方向性」と「上限」を定める階層です。
- 「新規顧客獲得」や「ROAS最大化」といった最終的な広告目的を設定し、AIによる最適化の目標と全体予算を定義します。
3. 広告セット
キャンペーンの目的を達成するための「具体的な戦略」を実行する階層です。
- ターゲティング(誰に)、入札戦略(いくらで)、フリークエンシー(頻度)など、配信の核心となる設定を行い、入札エンジンと予測エンジンに最適な配信を指示します。
4. 広告
ユーザーに「何を」「どのように見せるか」を決定する配信の末端です。
- 広告のデザインやレコメンドルールを管理し、動的クリエイティブ最適化(DCO)エンジンが機能することで、ユーザー一人ひとりにパーソナライズされた広告を瞬時に生成・配信します。
Criteo広告の料金体系
Criteo広告の課金方式は、主にクリック課金(CPC)です。
広告が表示されただけでは費用は発生せず、ユーザーが広告をクリックして初めて料金が発生する、費用対効果の分かりやすい仕組みです。
また、最低出稿金額が設定されており、それが月額50万円程度からです。
ただし、これは月額ではなく、広告費の累計が50万円に達するまで配信を停止できないという意味合になります。
Criteoの導入基準について
先ほど最低出稿金額に触れましたが、実はCriteoの導入にはサイト訪問者数による足切りも存在します。
それは、以下のとおりです。
- Criteo導入の最低ラインまとめ
- サイト訪問者数: 月間50,000ユニークユーザー(UU)以上
- 最低出稿金額: 50万円(NET)
これらの基準はCriteoのAIが「誰に」「どんな広告を見せるか」を学習し、広告配信を最適化するために最低限必要なデータ量を確保するためです。
一見ハードルに感じるかもしれませんが、確かな成果を出すための重要な条件と捉えましょう。
CookieがなくなってもCriteoは大丈夫?
近年、プライバシー保護の流れから、Webサイトを横断してユーザーを追跡する「3rd Party Cookie」の利用が世界的に規制されています。
「リターゲティング広告はCookieがないと成り立たないのでは?」と不安に思う方も多いでしょう。
結論から言うと、Criteoはこの変化にいち早く対応を進めており、Cookieに代わる新しい技術で未来を切り拓いています。
その代表的な2つの対策をご紹介しましょう。
戦略1|Cookieに代わる新しい「共通ID」
これまでのCookieが「Webサイトを横断して使える共通のパスポート」だとしたら、それが使えなくなるため、新しい本人確認の方法が必要になります。
📧
プライバシーを守りながら、世界中のサイトであなたを認識。
そこでCriteoが力を入れているのがメールアドレスなどを活用した「共通IDソリューション」と呼ばれる技術です。
例えば、あなたがニュースサイトAとECサイトBの両方で、同じメールアドレスを使ってログインしたとします。
Criteoの技術は、この(暗号化されプライバシーが保護された)メールアドレスを鍵として、「Aサイトのあなた」と「Bサイトのあなた」が同一人物であることを認識します。
これにより、Cookieという古い仕組みに頼らなくても、サイトを横断してあなたの興味を深く理解し、最適な広告を届けることが可能になるのです。
戦略2|お店の中だけで完結する「リテールメディア」を強化
上記の戦略1につながるもう一つの強力な戦略が「リテールメディア」です。
購入から次の広告まで、すべてが店内で完結。
① 🛒
購入
② 📊
データ分析
③ 🎯
広告配信
④ 📈
効果測定
これは、大手スーパーや百貨店のECサイト自体を、一つの巨大な広告媒体にしてしまうという考え方です。
近年、非常に注目されている分野です。
例えば、ある大手スーパーのECサイトは、「この洗剤を買う人は、こちらの柔軟剤も一緒に買うことが多い」といった、自社だけの貴重な顧客データ(1st Party データ)を持っています。
CriteoはこうしたECサイトと提携を進め、企業が設定した目標を効率よく達成できる技術を日々進化させています。
例えるなら顧客を「点」で推測する途切れ途切れの映像から、共通ポイントカードのように提携店のデータを繋いで興味を「線」で捉える、Cookie不要のアプローチへの転換です。
このように、CriteoはCookieレスという大きな時代の変化を見据え、多角的な技術開発を積極的に進めており、今後もマーケターにとって強力なパートナーであり続けると感じます。
【まとめ】Criteoを制する者がリマケを制す
今回はCriteo広告について、その仕組みから具体的な運用事例、最新動向までを詳しく解説しました。
Criteoは、AIによる高度なパーソナライズ技術を駆使し、ユーザー一人ひとりに最適な広告を届けることで、高いパフォーマンスを発揮する広告プラットフォームです。
ですが、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、データフィードの最適化や精緻なターゲティング、日々の効果測定と改善といった専門的知識と経験も重要です。
つまり、ただ設定して終わり、というわけにはいきません。
本記事で解説した技術構造と運用ノウハウを理解することが、貴社のビジネス成長におけるCriteoの価値を最大化する鍵となります。

